こまのすけ
8月26日、米国オクラホマ州地方裁判所がオピオイド中毒蔓延訴訟で、ジョンソン・エンド・ジョンンソン(J&J)に5億7200万ドル(約606億円)の制裁金を支払うよう命じました。
J&Jは判決直後に、上告の意向を示しています。
詳しくはこちら。
こまのすけは、この訴訟結果を受けてもJNJホルダーとしては楽観的で、ガチホを決め込んでいます。
今回は、その理由について考察していきたいと思います。
JNJの企業分析についてはこちら↓

この記事でわかること
最初に:オピオイドとオピオイド中毒問題
オピオイドとは
「オピオイド」は強力な鎮痛剤であり、手術後やがん性疼痛の管理には必須の薬剤です。
アメリカのオピオイド中毒問題
オピオイドは強力な鎮痛作用を示す反面、依存性も高く、米国ではオピオイド乱用による中毒患者の増加が問題視されていることをご存じでしょうか。
プリンス、トム・ペティといった著名人もオピオイドの過剰摂取で命を落としています。
アメリカでは、1999年~2017年までに70万人が薬物の過剰摂取で死亡しており、その2/3以上がオピオイドが原因だったとされています。
(詳細はこちら)
さらに、
オピオイド系鎮痛薬による中毒死は、アメリカでは1999年から2011年とを比較するとおよそ4倍に増加した。
と、オピオイド中毒者は年々増加の一途をたどっています。
このようなオピオイドの中毒・危険性に対する説明責任を怠ったとして、今回JNJはオクラホマ州から訴訟を起こされたわけです。
オピオイド中毒が蔓延している原因とは
オピオイド鎮痛剤が労働者を中心に、この地域で乱用された最大の要因は、医師による安易な処方にあると見られる。
ウェストバージニア州南西部のカーミット。人口わずか400人の小さな集落だが、ここにあった薬局は年間に600万ドル(6億6000万円)を超える売り上げを上げていた。その多くは鎮痛剤の販売によるものだ。チャールストンの地元紙Gazette-Mailによれば、同じオピオイド系鎮痛剤で中毒性が極めて高いヒドロコドンの錠剤が900万錠も卸されていた。
「今回のエピデミックには4つの構成要素がある。鎮痛剤を求める個人、安易に処方箋を書く医師、その医師と結託している薬剤師、中毒が広がる中で鎮痛剤を卸し続けた医薬品卸だ。率直に言って、利得のために必要のない人にまでオピオイド鎮痛剤を処方した」
日経ビジネス-失業、ドラッグ、家庭崩壊のデススパイラルより抜粋
人口わずか400人の集落にある薬局が、オピオイドの販売で年6億円の売り上げを出していたとのこと・・・。
このようにオピオイド中毒が蔓延した原因は、
・医師による安易な処方
・すぐに鎮痛剤を希望する国民性
にもあると考えられます。
日本では、頭痛などの疼痛コントロールにはまず「非オピオイド鎮痛薬」が使用されます。
ロキソニンやボルタレンなどは一度は聞いたことはないでしょうか?
米国でのオピオイド処方蔓延の一因として、製薬会社のロビー活動が盛んなこともあるかとは思いますが・・・。
製薬会社だけにオピオイド中毒の責任を押し付けるのもいかがなものかと思います(-_-;)
処方の規制なども考慮すべきでは?というのがこまのすけの感想です。
オピオイド訴訟が与える影響は
賠償金の影響は軽微
JNJの2018年の売上高は815.8憶ドルです。
今回の裁判での賠償金は5億7200万ドル。
売上高の0.7%に過ぎません。
株価への影響も軽微
当初予想されていた賠償金は最大175憶ドル(売上高の実に20%)ですが、「思ったよりも賠償金が安い」という判断で株価は上がっています。
参照:tradingview
原告のオクラホマ州は、先のオピオイド訴訟において
パーデュー・ファーマ(アメリカ製薬会社)と2億7000万ドル
テヴァ・ファーマシューティカル(イスラエルの製薬会社)と8500万ドル
で和解しています。
今回も、5憶7200憶ドルで和解するのでは?というのが個人的な予想です。
パーデュー・ファーマは、多数の訴訟に耐えきれず連邦破産法申請に備えているようですが、JNJの順調な売上高推移と潤沢なキャッシュフローを見る限りその心配はなさそうです
オピオイドの販売停止の可能性は極めて低い
ABBVのヒュミラが売上高の6割を占めるように、オピオイド製剤だけで売上高の大半を占めていればさすがに打撃は大きいと思います。
しかし、JNJの売り上げにおいて医薬品は51%、さらにJ&Jは判決後に「オピオイドはジェネリックも含めアメリカ市場で1%以下のシェア」とHPで発表しています。
たとえ、政策でオピオイドの販売数が減少したとしても売上高への影響は軽微とみてよいでしょう。
また最初に述べた通り、オピオイドは術後・がん性疼痛のコントロールにおいて必要不可欠な薬剤です。
すぐさま販売停止となる可能性は極めて低いのではないかと思います。
今後のJNJに対する投資スタンス
製薬会社にとって、訴訟というのは避けては通れない問題。
現にJNJはオピオイドのほかにもベビーパウダー訴訟も抱えています。
しかし、訴訟を抱えつつも売上高・キャッシュフローともに右肩上がりという現実がある以上、これからもJNJへの投資は継続していく予定です。
逆に、訴訟問題での一時的な下落は押し目買いのチャンスと考えています。
しかし、支払いが困難な規模の賠償金や、売上高に大きく貢献している商品の販売停止となれば話は別。
さすがにパーデュー・ファーマのように連邦破産法申請とまではいかないと思いますが、何が起こるかわからないのが投資の世界です。
オピオイド系鎮痛剤の訴訟として、初の連邦裁判所による審理が2か月後に控えています。
今後も裁判結果と賠償金については注視していく必要はあるでしょう。
最後まで読んでいただき感謝いたします(^▽^)